「ジェンダー概念の正しい理解」?その1

ジェンダーという用語をめぐって混乱が続いている。私は、この考え方はおもしろいと思ってきて現在に至るのだが、いかんせん、使われ方があまりにも胡散臭いのである。恣意的なのである。誰が?もちろんフェミニストやその同調者である。いわゆる「バックラッシュ」のせいなのではなくジェンダー論者のせいである。そのあたりのことを痛感させられる議論があったので、先日からの別板での議論を紹介しながら述べたい。

まずは、朝日新聞に載ったという次の記事http://arch.asahi.com/life/update/0605/002.htmlから引用する。

ジェンダーフリー」という言葉の使用をめぐって各地の自治体などで混乱が生じている問題で、福島社民党党首や女性団体の有志らが5日、「言論や思想の統制につながることのないようジェンダー概念の正しい理解を周知徹底されたい」とする要望書を猪口男女共同参画相に提出した。

これについて別板でJosefさんが、

ジェンダー概念の正しい理解」などというものは存在しないのだからどうしようもない。ましてや「ジェンダーフリー」という和製英語には共通了解など全く存在しない。2ちゃん用語を公的な通達等に使用するなというのと同じレベルの話で、「言論や思想の統制」とは何の関係もありませんね。

とコメントしたのだが、それを私が別のブログでの議論「macska dot org » 仲正昌樹著『ラディカリズムの果てに』のラディカルなコメント改竄」で紹介すると、ブログ主のmacskaさんいわく、

えーとですね、唯一絶対の定義がないというのはその通りですが、学問的に妥当とされている解釈という意味であれば「正しい理解」というのは存在します。唯一絶対でなければ存在しないのと同じというのは暴論でしょ。「ジェンダーフリー」に関しては、学問的にも共通了解はないですね。もし使うのであれば、その場その場でどういう意味で使っているのか確認しながら使えば問題ないですが。

ジェンダーの定義や語法は論者によっても違うし、同じ論者でも使い分けると自分で言ってたくせに。使い分けの基準はあるの?と問うても答えられず、文脈で読めとか居直る始末。「唯一絶対でなければ存在しないのと同じというのは暴論」とかいう次元ではない。「その場その場でどういう意味で使っているのか確認しながら使えば問題ない」とかいうけど、ではどういう使い分け方をしているのか問うても答えない。最後まで自分の解釈しか強要せず、「あんたはわかってない」しか言えないわけで、そんなんで理解の共有なんてできるはずがない。


「カルトの勧誘かよ、おまいらフェミは」と思うのだが、何でそんなことを思うのかといえば、上記引用のエントリの一つ前の議論「macska dot org » 誰でも分かる「ジェンダーがセックスを規定する」の意味とその意義」なのであった。「ジェンダーの視点」が「科学の歪みを正す」ことなどできるのか?というものなのだが、特にこのエントリの下のほうを参照。自分の意見からの引用だが、

こうなってしまうと、「ジェンダー」とは要するに、ただ単に「気分」を表現する用語にしかならないんです。「ジェンダー」という言葉に託して、その論者がその時に乗せたい「気分」。それは文脈でわかるだろというなら、その論者がどういう気分で「ジェンダー」という言葉を使っているか雰囲気で読めや、ということになる。

そんなので共有できるのは「気分」だけなんだよな・・・気分だけで統合された「改革」運動ってのはファッショなのだが。

ここで、あらためて確認しておきたいのだが、Josefさんは福島瑞穂らが「周知徹底せよ」というところの「ジェンダーの正しい理解」など存在しない、と言っているのである。ところがmacskaさんにかかると、あたかもJosefさんが「唯一絶対でなければ存在しないのと同じ」などと言っていることになるらしい。暴論はどっちだろうか。

そもそも、唯一絶対の定義を立てよなどとは私もJosefさんも言っていない。論者によって定義が異なることを責めているわけでもない。同じ論者によっても使い分けているんだ、文脈で理解せよ、勝手に誤解するななどと平気で居直りすることについて、あまりにも恣意的であり、気分的な用語でしかないと批判しているもの。

この定義の件については、うぃん(=しゅう)さんから次のサイトを紹介された。なかなか興味深いやり取りが行われているので、これについてはまた後日、私の感想を述べてみたい。

http://www.medical-tribune.co.jp/ss/2006-5/ss0605-4.htm
http://www.medical-tribune.co.jp/ss/2006-5/ss0605-5.htm
http://www.medical-tribune.co.jp/ss/2006-7/ss0607-2.htm